<柏島>

雑誌に載っていたホタテツノハゼの写真を見て「柏島」に一目ぼれしてしまった。
自分の目でも見てみたい・・行きたい・・・よし!行こう!!
いつ行く?9月の連休は予定を入れてしまったし、それじゃあ10月だ。
わーい、わーい、秋には柏島だ!!

恋の病に冒されつつも懐具合を考えて、JASのバースデー特割を使うつもりでいた。
ところが、設定期間は〜9月30日。
「つ〜と、なにかい?4月から9月まではお祝いしてやるけれど、10月以降は知らん顔かい?」などとJASのHPに向かって悪態をつきながら、ひたすら待った。絶対に10月以降もあるはず!
待っている間に、病気も少し落ち着きを見せてきた。
JASの高知便は往復とも中途半端な時間。それならここはひとつ大人になって、JASでしか行けないところに行くのはどうだろう?
そーよ!!柏島はなくならないわ!
JAS便しか飛んでないところは、南紀白浜、出雲、北九州、奄美大島となれば、(南紀白浜は9月に行くので)奄美大島しかあるまい。
柏島に未練は残るものの気持ちを奄美に切り替えた頃、設定期間10月1日〜の案内がHPに更新された。
しかし、問題が一つ、申し込みの日は小笠原でダイビングしているんだよね・・・

いよいよ搭乗券の発売日、ダイビングから戻った私は大急ぎで電話ボックスを探して飛び込んだ。
息せき切って電話した私の耳に聞こえてきたのは、「満席でございます。」の一言だった。
「で、では、高知の朝いち便と最終便はどうですか?」「1席ございます。」「そっそれ!お願いします!!」大きな回り道をして、柏島に決まった。

それからまた病は悪化の一途をたどる。
「背びれを広げていないときのホタテは枯れ枝か犬のふん・・」を読んでからは、道端で見かける犬のふんまでもが気になってしまい、ついつい見入ってしまうことも。
柏島についてのお気に入りのHPは更新を待ちながら、ほぼ毎日訪れる。
交通手段を思い悩み、時刻表と仲良しになる。
自分の住む東京以上に高知のお天気が気になってしかたない。

雑誌購入から早や4ヶ月。
すっかりどっぷり秋まっさり、待ちに待った柏島がやって来た。
実際には柏島がやってくる訳はなく、私がはるばる出かけてゆくのだが。
行くぞ〜!待っててね、柏島。

我が家から高知空港までは乗り換え・待ち合わせ時間も含めて2時間30分弱、「な〜んだ近いじゃん」と軽く見ていたら、その先が長かった〜〜。
同じく乗り換え・待ち合わせ時間も含めて6時間もあった。
高知はでかい!!
高知駅1番線で南風3号を待っていたのだが、ふと時計に目をやると出発時間は既に過ぎている。ホームを間違えたかと焦り、駅員さんに聞いてみると「14分程遅れています。」との答え。南風3号へ乗り遅れることはなかったが、その後の乗り継ぎはどうなるんだ!?
3〜6分おきに次が来る山手線なら構わないが、宿毛からのバスは逃したら次までは約2時間もあるんだぞ!!
やっと来た南風3号に乗ると、満席。どこまでもついていない・・・
早速車掌を捕まえて中村到着時刻を聞くと、のんびりと「大丈夫。それまでには遅れも取り戻しますし、待っていてくれますよ。」とのこと。
でも、その次のバスまでは待っていてくれないよな・・・
まあ、その後にももう1本バスはあるし、何とかなるか・・・と通路でお弁当を食べた後は、新聞に座って雑誌を読み始めたがいつの間にか眠っていたようだ。
中村に着くと、確かに土佐くろしお鉄道は待っていてくれた。駅員さんが「急いでください!すぐに出発しますよ〜」と言っていたが、走ったのは私一人で誰も急いでいなかった。
1両編成の路面電車のようだった。ワンマンバスよろしく、整理券を取って降りるときに精算する方式だった。私は既に高知駅で宿毛駅までの切符を買っていたが。

宿毛駅に着いたのはバス出発時間の3分前。駅を飛び出し、駅前ロータリーに走り出したのはやはり私一人だった。
柏島への直行バスはこの時間帯には無く、大月というところでバスを乗り換えることになる。さすがに移動を始めて半日たつと疲れてきて、バスの揺れがやけに気持ちよく眠気を誘う。
こんなことなら乗り込むときに「私は柏島に行きます。そのために大月で乗り換えなくてはなりません。降りるのは大月です。大月ですよ〜!」と主張しておけばよかった。眠り込んでいてもきっと誰かが起こしてくれるに違いない。
大月に着くほんの少し前に「柏島」行きのバスとすれ違う。そうそうたくさんのバスが柏島に行くとは思えず非常に不安になったが、下りるときに運転手さんが「柏島行きのバスが折り返してくるので、それに乗りなさい。」と教えてくれた。な〜んだ折り返してくるのか、紛らわしいじゃないか!
柏島行きのバスに乗り換えると、整理券も出ないし、行き先別の金額表もなかった。
おまけに乗っているのは小学生が5〜6人だけだった。 可愛く黄色に塗られたバスだったが、スクールバスではなかったはずだ。
さらに子供たちが降りて行った場所は停留所には見えなかったが・・・
柏島はもうすぐそこのはずなのに、走るのは相変わらず山に囲まれた道。 しばらく走ると今度は思いきり曲がりくねった細い道であった。
「動物注意」の標識があるところを見ると、雑誌でよく見る猿が出るのはこのあたりなのだろうか? 気をつけて見ていたが、それらしい影はなかった。
それにしても、この細い道を上手いこと大きなバスが走っていくものだ。
最初は黙っていた運転手さんだが、途中からはガイドまでしてくれた。「あそこに見えるのが沖ノ島、こっちが・・・(ごめんなさい、忘れました)」
8月にテレビで見た「新しい橋」と「古い橋」を過ぎ、とうとう柏島に入った。
「どこまで行くの?」「柏島小学校のすぐ下らしいんですけれど」「それじゃあ、ここで降りなさい。あの人達が行く坂道の上だから」
のどかな会話を交わしながら降ろしてもらったが、やはりそこも停留所ではなかったような・・・まっ、いいか。

3連休の初日、マリンクラブフリッパーズ柏島はゲストで埋まっていた。 どの人がゲストでどの人がスタッフかぜんぜんわからん。
人の良さそうなおにーちゃんに聞いて、裏側にまわるとたった今海から戻ってきたところのようであった。もう夕方の5時過ぎである。
疲れ様でした。ゆっくり休んで、私のためにも今日の疲れは明日に残さないでね。

民宿中川は実質おばちゃんが一人で切り盛りしているようで、こちらも大忙しであった。
そして、この人数をどう割り振って部屋に収めようか頭を抱えていた。 一人の私は、結局、お手伝いに来ているおばちゃんの親類のお宅に一晩泊めていただくことになった。
夜8時過ぎに暗い夜道を移動。「明日の朝食は7時にあっちでね。」
ちょっと冷たくないかい?暗い中1度しか通ったことのない道を、いくら明るい朝とはいえ民宿中川まで辿り着けるのか、私は・・・
ちょっと自慢するようだが、私の方向音痴は結構年季が入っている。(内緒だけど、今回も水中で迷子になった。)

13日にはたくさんいたゲストも14日の1本目・2本目・3本目とどんどん数が減り、3本目にはゲスト3人にガイド2人となってしまった。
ゲストは3人でも、うち1人はセルフなので結局マンツーマンである。日は若干落ちては来たが、この天気この海である。なんと言う贅沢ダイビング!!
被写体が引っ込んでしまっても、ガイドさんを振り返るとまた次の被写体まで連れて行ってくれる。このままずーっとここに居たい・・・はいはい、勝手に好きなだけいなさい、ボートは先に帰るきに。

14日はここ柏島のお祭りだそうで、昼はダイビングに行っていたのでどんな催しがあったのかはわからないが、夕食は民宿のおばちゃんが作ってくれたお寿司だった。
そう言えば、昨日は鏡餅があった。おばちゃんはお祭りの時は用意すると言っていたが、お正月以外で鏡餅を供えると聞いたのは初めてだった。やはり、その土地その土地でいろいろと違うものだ。
夕食に話を戻そう。
お魚が苦手な私のために大きな海老まで焼いて用意してくれていた。 鰹のたたきに、おばちゃんが採ってきた天草で作ったというゼリーのデザートもある。
あらかじめサービスに電話があってスタッフとゲストもお招きに預かり、おばちゃんのお友達も一緒のにぎやかな食事だった。
おばちゃんは良い人だが2人きりになるのはちょっと不安だったので、大人数はうれしかった。
話が弾んでくると結構早口になり、方言も各所にちりばめられる。そうなると、話の半分くらいはわからなくなるのである。前後の内容と想像力を駆使して相槌を打つ。 時により全然わからず、黙ってニッコリ微笑んで終わらす。
おばちゃんを始めお友達は既におばあちゃんの年代で、話しながらもスタッフのおにーちゃんの髪の毛に目が吸い寄せられてしまうようだった。
おにーちゃんの髪の毛は金に近い茶パツだし、それもしかたないかも・・・実際この私も昼間さわらせて頂いたくらいだし。

翌15日は飛行機で帰るためダイビングなしの予定であったが、めったに無い好条件を逃すのが忍びなく、飛行機をキャンセルして2本潜ることにした。
それを決めたのは14日の晩だったが、どーやって帰るかで大騒ぎしてしまった。
結局、交通機関の予約を取るにしても営業時間は終わっており、手は出せなかったのだが・・・
夜行バスは2本走っているし、寝台特急もあることに気が付き、その晩は安心(ちょっとだけ不安も残るが)して床に着く。

翌朝は6時半に朝食にしてもらい、7時には民宿を出てサービスに向かった。
フリッパーズではまだ誰も起きていないのか、大きな蜘蛛(う〜む、恐ろしくて迂闊に動き回れないじゃないか・・・)と犬のティナが迎えてくれた。
お天気は多少雲がかかっていたが、相変わらずベタ凪。
せっかくきれいに洗って乾しておいた器材をまた使うのは惜しい気もしたが、最高の海とマンツーマンのガイドを逃がす訳にはいかない。
さすが南国高知と言えども、10月半ばの朝7時は冷える。 乾しておいたウエットには夜露だろうか水滴がたくさんついていた。これじゃあ何のために乾してあったのかわからないじゃないか!まぁ、シャワーを使って着るのだから一緒か?
蜘蛛君はくっついていないよね?

サービス前の道に立っていると、すぐ近くにある小学校に登校してくる子供たちに挨拶された。
おぉ!そうであった、今日は平日。それにしてもまだ7時半だというのに、少し早くないかい?
このあたりではおじちゃんもおばちゃんも道で会うと旅行者の私にも挨拶してくれる。 なんだかほのぼのやさしい気分になれる。

昨日までの賑わいとは一転して、桟橋も海も静かだった。
後浜もたくさんのダイビングボートがブイが空くのを待っていたが、今日はどこもみんな空いていた。
ホタテツノハゼを教えてもらい砂地を這ってにじり寄る。もう一歩というところまで寄ったその時、右手からシマウミスズメがフラフラと泳いできた。
迂闊に手で追い払うわけにも行かず、「こら、あっち行け!」と心の中で叫んだのだが、奴はどんどん私のホタテ君に泳ぎ寄ってゆく。
「ピュ!」(もちろん音はしないが)ホタテ君は引っ込んでしまった。(T-T)
「シマウミスズメめ〜憶えていろよ!この借りは絶対倍にして返してやる!」
ホタテツノハゼやら、ヤシャハゼやら、クマドリイザリウオやら、ニシキフウライウオやら、ハナヒゲウツボやら、ウミウシカクレエビやら(いーかげんにしろ!)を独り占めで撮っていたら、結構な減圧時間を出してしまった。
浅場に戻って唯一見つけられるクビアカハゼとエビの共生をしばらく観察して、残りの時間は減圧用のバーに巻き付いて過ごした。同じく巻き付いていたもう一人のゲストの方にアオリイカを教えていただき、最後まで楽しいダイビングだった。

2本目が終わると、大急ぎで帰り支度。
器材を洗い、水を切って、シャワーを浴びて、お昼を食べて、精算をして、荷造りをして・・・ バッチリ化粧・・はしなかったが、ほぼ1時間でやった。
ご好意で送ってくださるもう一人のゲストの方をお待たせしてしまったが、本当のところ「私ってすごーい!!」とかなり満足していた。内緒ね。

時間は12時過ぎ。例のくねくね道は、繁った木々からの木漏れ日がたいへん美しかった。
初めての私のために途中で車を止めて景色を見る時間まで作っていただいた。
「後も見てごらん」と言われて振り返ると、往路では見られなかった猿がすぐ近くまでやってきていた。車に戻ってからも、道のそこここに猿がいる。
小さな可愛い小猿を脇や背中にした親猿も混じっていた。黒目がちの真ん丸い目をした小猿はとっても可愛かった。
一匹お持ち帰り用に包んでくれないかしら?「あつ、そこの小ぶりなのをお願いします。」なんて・・・

宿毛駅に着くと岡山行き南風18号の出発2分前だった。
時刻表によると17:27には岡山着く。高知で時間をつぶして夜行バスに乗るつもりでいたが、新幹線を乗り継いで十分帰れる時間だ。ちょっと奮発して新幹線で今日中に帰り着くことにするか!
方針が決まったところで安心して、ぐちゃぐちゃな手荷物の整理とやりのこした航空券のキャンセルに取り掛かった。
しかし、車内には電話はついていないし、私の持っているPHSは力強く「圏外」を主張している。同じ車内では携帯電話を使っている人もいるのに、根性ないぞ!!PHS。DOCOMOに負けるんじゃない。
高知駅前ではPHSも機能していたので、高知まで猶予をやろう。高知に着いたら頑張るのだぞ!
高知駅停車中にはPHSもようやくやる気を見せ、航空券のキャンセルも無事済んだ。
心配事がもう一つ。四国を出て岡山に入るまでどの駅でも停車時間はほとんどない。高知のお土産はどこで買おう?(会社休んでいるしな・・・)
なぜか岡山駅で「もみじ饅頭」と「さぬきうどん」を買ってしまった私だが、行ってきたのは高知である。
新高梨はどーした!?
匂い米はどこだ!?
かつおの生節もおいしそうだったじゃないか!
アンパンマンのオレンジカードなんていうのもあったぞ!
四国に足を踏み入れたのは今回が初めてで、正直な話高知県以外の配置も定かではなかったこの私ではあるが、今回の旅行で一気に高知・徳島・香川をまたにかけた。何でも聞いてくれたまえ!(多分答えられないが)

土佐くろしお鉄道、土讃線(何台かのアンパンマン列車とすれ違った)、予讃線、本四備讃線(楽しみにしていたのに寝ていたらしい・・・背の高いビルがちらほら見えてきたなと思ったら既に岡山県だった)、宇野線、山陽新幹線、東海道新幹線、横須賀線を乗り継ぎ(実際の乗り換えは、岡山と新大阪と東京だけだけれど)、22時20分に自宅に到着。
柏島をだいたい12時に出発して、約10時間半の移動時間であった。
ハワイまで行けてしまいそうな時間だが、どっちを取るかと言われたら(多分誰も聞いてくれないだろうけれど)、
力一杯「柏島!!」

 

お世話になったマリンクラブフリッパーズ柏島の矢野さん、星加さん。(美人の奥様の写真は撮れませんでした、残念!)

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